web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

『クワイエットルームにようこそ』

 えっと、内田由紀演じる主人公「佐倉明日香」って「松尾スズキ」本人を投影させてるのかな?まあそれは置いといて。
 本日立川シネマシティにて観てきました。『クワイエットルームにようこそ』(→http://www.quietroom-movie.com/)。映画的な演出がどうこうとかってのはわかりませんが、日常に対する出口のない感覚について、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』よりも手前で止まってるような印象を受けました。
 現実から隔離されたように見える閉鎖病棟。現実からそこに逃れようとしたり、そこから現実に戻ろうとしたり。でも結局そこがどこであっても「ここから外」に行くことはできない。
 それはそうなんだけど、もうそろそろ次の段階の話が観たい・・・っていう個人的な欲求があって、その辺りの希望をしっかり描いてる『腑抜けども』(http://www.funuke.com/)の方が凄かったかな。
 『腑抜けども』の観点から見れば、クワイエットルームをめぐって希望とか人に迷惑かけるとかどーたらこーたらやってるのはみんな「腑抜け」になるんだろうなあ。キツイ現実でも「逆に面白い!!」って反転させて大肯定するくらいの気概が、この映画からはあんまり読み取れなかった気がします。
 確かに、映画の最初の方では深刻な状況であればあるほど滑稽さが際立って笑えるんだけど、最終的に、深刻な状況は律儀に深刻なシーンに見せている。
 多分『腑抜けども』との大きな違いは、辛い状況下での笑いがシニカルか否かだと思うんだけれども、『クワイエット』では「逆に面白い」って言う姿勢の笑いじゃないだけに、深刻度によって笑いは薄められちゃったりする。『腑抜けども』は、深刻度と比例して笑いが強まっていくようになっていて、深刻な状況を笑って肯定しようっていう意志がすごく感じられる仕組みなんだと思う。