web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

『自虐の詩』が映画化だそうだけれど・・・

 呉先生がBSマンガ夜話に出演した翌日、早速本屋で手に入れた『自虐の詩』。その時はあんまりよくわからなかったんだけれども、しばらく放置してから読み返したある日、嗚咽を漏らしながら泣いたというw。そんな作品。

 辛い日常を相手どるとき、僕らのほとんどは最初『クワイエット』みたいな姿勢になって、その後『腑抜けども』に発展・・・そして次は・・・模索中(密かに古谷実の次回作に期待ww?)って感じなんだろうけど、『自虐の詩』は、始めから「現実とは辛いものだよ」っていうのが隣り合わせ。傍から見るとどう考えても辛い現実を、「私は幸せ」と生きる女性「幸江さん」が主人公。
 わざわざシニカルな「笑い」になんてならなくて、幸薄話が四コママンガの簡単な描線で表現されていく。ドラマチックとは程遠い絵柄で、しかしだからこそ深刻な話が牧歌的(という表現が適切かはわかりませんが)にすら見えて、幸江さんの「それでも幸せ」が「そうだよなあ」なんて説得力を持つ。
 まあいまさら言うまでもないくらい、読んだ人は絶対言うところだろうけど、幸江さんの中学時代の友人「熊本さん」との物語が、・・・いやもう今書きながら思いだすだけで号泣しちゃいそうなw。
 自意識との深い格闘が、やっぱり『クワイエット』にも『腑抜けども』にもあるけれども、『自虐の詩』にはそんなものはない。んで、そういう人間が、幸せに暮らしている。それは現実を見ていない、ただの欺瞞だとかなんだとかって言われようと、そんなことを言うヤツよりもはるかに濃密に、まっとうに生きている。