web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

午後10時。口数少なく、時々吹く風を待っている。

◇クーラーのないこの部屋を借りて初の夏。熱帯夜ももちろんはじめて。暑さに気力を奪われながら、畳の上に寝そべっていた。畳は夕方の西日の熱を充分に吸い込んで、まだまだ興奮しているようだった。

◇日曜日は重い腰をあげて水泳に行ってきた。先週は妻も一緒に行ったのだが、妻と張り合おうとしてついていけず、挙げ句水から上がった後に吐き気と立ちくらみを覚えたので、もう今週はひとりで行くことにした。
 水泳後の眠いような感覚は小学生の時分を思い起こさせる。しかしここでさらにビールを飲めるのは特権だと思いながら、ニヤニヤと横になっていた。

◇夕方。id:ama2k46先生に「我が家にいらしてください」としつこく言い続けた念願叶って、なんとまあこの暑い我が家に来てくださった。幸い、昨夜は暑いとはいえ風があった。これが一日ずれていれば、先生を寝不足で苦しませたに違いない。

◇妻の手料理をわしわしと食し、駅前の銭湯でご自身の眼鏡を破壊し、僕よりも既に八王子の古本屋に詳しい先生は、常にエネルギッシュに話し続けていた。それは常に批評の言葉であり、対象が先生の身体を通過していくのがありありとわかる。「tumblrは人間の感覚を新たに開くねん!」「アラザルは、あれやね。非モテリア充・嫁依存やな! 日本・現代・美術みたくナカグロ入れた方がええねんな。悪い場所感も出しときながら」「見よ右左ってあすこのミラーの下のあれ。“見よ”ってのがええね!なんか!みぃいよぉおおおって!(←力みながら)」

◇一夜明けてお昼間近。炎天下の八王子の街中、お見送りがてら古本屋を案内してもらった。陽炎揺らめく古本屋の店頭で、江藤淳蓮實重彦『オールド・ファッション』、伊藤整『知恵の木の実』、江藤淳『海は蘇る 第二部』、江藤淳夏目漱石』、北杜夫『楡家の人々』を買った。500円玉ひとつしかなかったが、ところどころama2先生から資金的な援助までしていただいた。頂いたおみやげのひとつに、中央公論社の『日本の文学57高見順』もあったから、かなりの収穫である。

◇祝日が嬉しいのは休日が増えるからなのだが、出勤日が減るからでもある。

◇というわけで、考え事の続きはやめにして、冒頭のメモだけ以下に残して眠る。

◇ヲタファッションやハイファッションは、その文脈の中の身体を想定して作られているから、僕らの日常生活における身体にそのファッションを持ち込んでもうまくいかないというのは当然といえば当然。でも時折、それを間違えてしまうことがあるのは、自分の身体を確認するとき、まず最初に「鏡を見る」という行動をとるからだ。アニメやファッションショーの世界と自分を文字通り同一平面上に乗っけてしまう。
 こういうのが、僕の中の二次元のイメージ。それぞれの文脈をすっ飛ばして、身体をどの空間にもトレースできる。

◇かなり乱暴だけれど、僕は自分の身体を俗的な四次元話みたいなもので捉えようとしている。いわゆる二次元は空間、三次元は立体、四次元はそこに時間を加えるってやつ。鏡に映った自分独りの姿を二次元*1、他者との関係性を取り込んだ身体を三次元、作品に落とし込まれた身体を四次元、みたいなイメージ。
 だから別にこれはアニメは二次元でリアルが三次元とかっていう話とは違う。
(つづく)

*1:正確に言えば、鏡に映った自分の姿を自分の姿と認識できる時点で、それは自他の区別ができる=他者との関係性を取り込んでいる=三次元ということにはなる