web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

午後五時。明るい家路。

◇仕事が一段落したので、定時より一時間ほど早く上がることにした。一年のなかで最も寒いが、同時にびっくりするくらい暖かい日もあるのが2月だったりする。

◇もう一ヶ月以上も前のことになってしまうのだが、息子が無事卒乳した。
 年末年始の9連休に断乳を決行。乳が欲しくて泣き続ける夜もあれば、笑いながらパタンと寝てしまう夜もあり、そんなのを繰り返しているうちに、連休が明ける頃にはなんとなく入眠スタイルが出来上がりつつあった。なぜか妻の顔を触りながら寝るのである。

◇一月の連休は、小学校からの腐れ縁たちと日帰り温泉旅行へ行ってきた。僕らは高校時代にバンドを始めて以降、一緒に暇な時間を持て余してきたのだが、やはり実家を離れるとなかなかそういうわけにも行かない。そんななか、なんとなく一昨年あたりから年末の日帰り温泉旅行というのが恒例行事化してきたのだった。とはいえ、なんだかんだフルメンバーで行けたのは初めて。今年は仲間内の二人が結婚する。
 そのうちのひとりは、僕と同様就職が遅れたクチだが、最近電車の運転士免許を無事取得し、僕のうちの近所を走る交通機関で働くことになっている。僕の家族の姿を見かけたら、ホーンを軽くならしてくれると言う。

◇『レ・ミゼラブル』。歌い手の顔をスクリーンいっぱいに映し、歌声を細かくしっかりとマイクで拾いながら、微細な筋肉の動きや息遣いを丁寧に記録していく。それはまさにフィクションのフォーマットに乗っかったドキュメンタリなのだが、ところでふと、大友克洋の画もそのようなものではないかと思ったりした。
 何かをひとつの画のなかに描写するという時点で、恣意性は免れ得ないが、というかそれは積極的で自覚的な作為のうえにようやく成り立つものだったりもする。再び顕われたアン・ハサウェイは、それを毅然とした態度で暴露してしまう。

◇『アルゴ』。ハリウッドとアメリカがそのままイコールで結ばれた、幸福な映画だった。宇宙を舞台にすれば、あらゆる人間が対話可能になる。「偽装だけが銃から身を守るんだ」というのは今年一番のパンチラインだと思う。