web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

午後2時半。賑やかに読書。

◇妻の外出中、息子とふたりで留守番。今朝届いた本が気になってパラパラ読んでいると、息子も隣に来て絵本を捲り始める。考えてみれば、息子とふたりの時間に、それぞれ別々の本を読んだのははじめてである。

◇しかしまだ文字の読めない息子にとって、読書とは絵からの連想を語るものであり、歌を交えるものであり、あるいは文字部分を誰かに読んでもらうものであり、つまりいずれにせよ音読である。よんでよんでよんでっでー、という不思議な節回しで音読をせがまれると、私はその都度キャラクターの台詞やら電車の型番やらを読み上げ、そうしてまた自分の本を黙読する作業に戻る。しかし息子は、ページを捲るたびに必ずよんでよんでよんでっでーと唄うので、私はほとんどの場合、息子の絵本の音読と自分の本の黙読を同時にやらなければならなかった。こういうことは、結婚して妻といっしょの時間によく起きることでもあった。

◇風邪がずるずると続きながら、結局本格的にダウンしてしまった。ズル休みではなく、普通に病欠することほど辛いものはない。

◇鎖グループ vs. Libra Records
 話題にも依るけれど、ビーフはやっぱりとりあえずは人々の耳目を集めることができる。ヒップホップ界最大の悲劇であった東西抗争は、しかし同時にヒップホップ躍進の重要な要因だったわけで、効果的なブレイクスルーとしてビーフを用意する、というのはある種の方程式ではある。今回の一件は、様々な側面から捉えられるだろうけれど、ひとつ、アメリカにおける東西抗争のような働きをする可能性を思った。しかも、あちらのように悲劇的なドラマではなく、音楽ビジネスにとって建設的な提案をも伴っている。
 先日暴露されたLibra Recordsの内幕というのは、ややサグではあったけれど、騒ぎ方を一歩間違えれば、つまり例えばこれをヒップホップ専門メディアでやってしまえば、それこそヘッズを喜ばせるゴシップビーフとして消費されて終わりだし、シーンの外の人間に言わせれば、「クリエイティヴ」業界あるあるにまとめられてしまっただろう。しかし、漢がdommuneというメディアを介して(そして宇川直弘のフォローを受けつつ)行ったこの告発及び決意表明は、ネット時代の音楽ビジネスの在り方という括りを可能にし、一気にポピュラーな話題にしてしまった。

宇川直宏・MC漢が語り合う これからの音楽ビジネスのあるべき姿

 そしてまた、この会見はシーンの外の人間に対しては、極めて有効なヒップホップのプレゼンテーションにもなっている。シーンの拡大を考えるとき、マスを狙ってジャンルの伝導を行うというアプローチも非常に大切な仕事ではあるのだけれど、喧嘩を始めて、自分たちを魅力的にプレゼンしてしまうバトルMCの基本的なやり方も、リングの設定次第でいくらでもブレイクスルーになり得る。MC漢らしい、極めてスマートで実践的な提言だと思う。

◇これ面白い。

R&B的な唄い回し、シラブルとメロディーラインの関係が、ボイスエフェクトにも影響する。