web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

午前6時。朝の鳩の声、遠くを車が走る音。

◇妻と息子が親戚の法事で一泊してくる。私は仕事の都合上出席できないため、子供が生まれてから初の留守番を経験している。PCやスマホをいじろうと本を読もうと、息子がいたずらをしてこない。

◇土曜日午前中は、入院している母の見舞いへ。なんでも糖尿病の教育入院とやらで、期間中、ビデオ講習だの冊子の読み合わせだので、それなりに慌ただしいらしい。話を聴くに、運転免許の講習のようだった。途中、「様子はいかがですか?」と診に来る看護士や研修医相手に、もらった薬が昨日から見当たらない、あ、あった、あったけれどしかし昨日飲んでいないのでこれでは数が合わない、とか、ほとんど症状と関係ないことをよく喋っていて、相変わらず元気そうであった。
 外出等は割と気軽にできるようで、この日の午後も、母は自分の飼っている犬猫に会いたいために、仕事の理由をくっつけて外出するとのこと。現在、彼らの世話は、母と離れて暮らす父が行っているそうで、毎日メールで犬猫通信が送られてくるそうだ。「毛深いから」という理由でペットを遠ざける父は、しかしいつも最終的に、彼らの世話をよくしていた。私が一番懇意にしていた猫を看取ったのも、そういえば父である。そのことを知らせるメールは、珍しく少し感傷的だった。ちなみにその日はフィリップ・シーモア・ホフマンの訃報も続けて入り、なんとなく両者は似ていたので、妙に納得したのを覚えている。

◇午後は、その足で突発的にズーラシアへ。私と息子は初めてで、妻は昔、開園直後に行ったことがあるそうだ。田園都市線JR横浜線相鉄バスに乗れた息子は嬉しそうだったが、動物園に到着するやいなや雨に降られ、妻はくやしがっていた。おそらく雨の動物園鑑賞になったことに対してではなく、普段雨具をきちんと用意しているのに、この日に限って忘れてしまったからだ。日傘にもなる折りたたみの傘を買って、息子は私が抱き上げて、大急ぎで回った。夫婦は、今日は次回のための下見だと、何度も確かめ合った。
 ズーラシアには、ズーラシアンブラスという全国を行脚する楽団があり、メンバーはここに暮らす動物達で構成されている(http://www.superkids.co.jp/z-brass/zb/profile.html)。以前、私達は彼らの公演を観たことがあり、そのとき息子はチューバ担当のホッキョクグマとマエストロのオカピのファンになり、サインまでもらってしまった。いつか、彼らのホームであるズーラシアでの演奏を観たいと思っていて、演奏会のある日に合わせて来園するつもりだった。しかし、夏は演奏会の回数が少ない。それもそのはず、ホームの演奏会場は屋外ステージで、さすがにメンバーもきつかろう。だから夏に下見としてズーラシアを一度訪れ、秋口には演奏を観る予定なのであった。
 さて、下見として来たズーラシアだが、園内のつくりが非常によく工夫されており、また展示内容も希少動物をメインに据えてあったりして、びっくりするくらい良かった。個人的には多摩動物園よりも楽しめる。息子は抱きかかえられながら、汗だくになった私の呼吸を真似して、ふう、ふう、と言いながら笑っている。そういえば私が筋トレをするとき、いつも隣で、ふう、ふう、と腕立ての真似事をやっているのだった。

KOHHにとっての最先端とは、ほとんど最新という意味でもある。

LOVE&SEXなリリックとジュンジタカダばりのアティチュードを一方の柱としつつも、もう一方にはきちんと真顔な軸を用意していて、そういったKOHHの振り幅は、ほとんど『稲中』の後期から『僕といっしょ』辺りまでの古谷実を彷彿とさせる。彼は実際、リリックに『僕といっしょ』からの台詞を引いているわけだけど、しかしところで、それより何より、この佇まいの凄みは一体なんだろう。ファレルの向こうを張ると言っても良いくらい、大変におしゃれなんじゃないかと思う。エロ顔と真顔という両極の点を結ぶ線に、ぶっ飛んでてセンスのいいファッションというビジュアル要素をもう1点加えることで、KOHHの全体像が面として立ち上がる。だからファッション的な意味でも、きっと、最先端を押さえるためにも、最新でなくてはならなかったのではないか。そして、だから、ファーストアルバムよりも、後から録ったセカンドアルバムの方が先に来たのではないか。latest albumという意味で。

◇正午から17時過ぎまで、近所のスーパー銭湯で過ごす。16時過ぎまでサウナを出たり入ったりして、湯上がりにビールを呑みながら少しだけ読書。なんだか手持ち無沙汰でもある。