web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

命令口調が嫌い/「絶対であらざるをえない自分」と「自分の絶対化」

◇遅ればせながらはまってるPerfumeですが、PVを日がなぼんやり見ながら思うのは、彼女達にわかりやすい性欲がわかないっていうことです。わかりやすいっていうのはPerfumeの誰かと「セックスしたい」とか、もっとソフトにしても「手をつなぎたい」とか、「告られたい」とかっていう、アイドルに対して抱くバカバカしくも純粋な妄想のこと。いや、そりゃそういう人もいるんだろうけれど、Perfumeが他のこれまでのアイドルと明らかに違うのは、もっともっと微細でもやもやした、「何かしたいんだけど何したらいいのかわからない」な情動を喚起させる点だったりするような。
 PerfumeパロディのAVの存在も聞いたことない。・・・まあ、AVに本物のアイドルが出る時代にアイドルパロディやったってなんの意味もないっていう理由なんでしょうけど、それにしたって久々に出た大型アイドルに、時代を読めないAVメーカーのひとつやふたつ、PerfumeAVを出してもいいもんだと思うんだけど。沢尻エリカだってあったわけだから。つまり、Perfumeと直接的な性欲って、ちょっとすぐには結びつかない。
 Perfumeのエロさって、多分創造性っていう言葉のままの方がしっくりくる。無機質な中に女の子らしさを織り交ぜる振り付けっていうけど、それプラス、振り付けからはみ出した身体。Perfumeという生き生きとした女の子三人の、収めるべきパッケージを非常に小さくすることで、収まりきらない部分がむしろ逆説的に立ち上がってきて、はじけんばかりの「人間」が物凄く際立つ。
 
 この新作、撮り方がダンスアイドル・・・って言ってもPerfumeもそうかwいやこの場合ブリトニーとかを想定してるんだけど、そういうののPVらしい撮り方な感じがする。でもPerfumeを撮るとこんなに手触りが違う。ようするに、ブリトニーとかってまあブラックミュージック以後のダンスで、緊張しない身体を自由度高くリズムに乗せるってやつだけど、Perfumeはすっごく振り付けに忠実な動きをするので、その外側がいともたやすく、しかも無限に浮かび上がる。禁欲とドラッグがイコールみたいな感じで。だからPerfumeは、そのまま人間性って言葉にまで届くエロさがあると思う。

◇ある人が「文化系ってフェミニストだから、女の子の話とかまじめに聞いちゃうんだけど、でもある程度命令口調で話したりする方がモテるんだよねw」なんてことを言っていたw。大体その通りだと思う。これはまあ男女問わずなんだけど、命令口調でぐいぐい引っ張ってくれる人の方が、やっぱりみんなついていくときに安心できるわけで。ただ僕がここで思ったことは、文化系ってやっぱり非モテなんだなってこと。
 非モテ=モテない恋愛弱者っていうのは少し違ってて(まあ往々にしてそういうことが多いわけだけれど)、例えばここでいう非モテ的振る舞いっていうのは、命令口調で女の子に話しかけた方がモテるのは知ってるけど、でもそんなことに安心してついてくるような女の子なんかとは付き合いたくないやいっていうもんだと思う。だから非モテっていうのは一種の倫理的な価値観を自分に強いることで、僕はこういった姿勢には好印象*1

◇僕は「誠実でありたい」という願望を持っているわけですが、さて「誠実」といったときに、何に対して誠実でありうるかっていう問題がある。だからそれは「私が何に価値を置くか」によって決まってしまう。
 自分の絶対性を信じるっていう態度が根底にあるわけだけど、それって正しいんじゃないのか?よくオウムが引き合いに出されて、彼らは絶対性を信じてしまったために暴走していったじゃないかっていうけど、彼らの行動の問題点はつまり、絶対を共有しようとしたところにあって、自己っていうのは自分にとってはいつだって絶対なもので、そこから逃げ出そうとする態度もまたよく考えたら気色悪い。

◇命令口調っていうのは「自分の主張は正しい」っていうのを人に知らせる態度。自意識の問題から命令口調を使う場合、使って良いのは自我を侵食し合う恋愛関係においてのみであって、それ以外は自分のパブリックイメージを自分で設定して、それに従わせようとする態度だって言い切っていいんじゃないかと思ったりする。

◇『ヒメアノ〜ル』。今週まで駆け足で『シガテラ』の位置まで持ってきた感じ。見所はこれ以降でしょうね。あ〜コケたらどうしようってハラハラする。

◇Life外伝『俺たちに明日はないッス』のヤツを聞いた。以前「チキ」さんだったはずの荻上チキさんは、「chiki」さんになってて、おそらくcharlie風味が足されてるものと思われましたw。『百万円と苦虫女』についてのcharlie&chikiさんの言及は、まあ大方の予想通りだったと思うんだけど、そこをかき回す役が森山さん一人なのはちょっと足りなかったかな。でもまあ最近のLifeで言及されなくなってきた作品論(?)が久々に聞けてよかった。
 それにしてもchikiさん、嫌味なオーラがもっと出てくればcharlieとはまた違った失笑キャラになれるはず。今後のLifeに期待。
 それにしてもchiki&charlieみたいな人って、「役を演じればいいから」とかって自分を相対化してるっぽいこと言う割りに、「俺たちメンドクサイ恋愛してきたよね」とか言えちゃうのがツッコミどころ。てか、これって浅野いにお問題だと思うんですけど、冷めた視点持ってる自己演出してるヤツほどすぐツライって大声で喚く現象w。何かにつけて自分を相対化する人ほど、今ここに現実に居る自分にすごく執着してるものだと思うけれど、でも冷めた視点を持つことを表明した以上、すぐ自分を絶対化するなんてことは自制(する努力)しなければ不誠実だと思う。そういった誠実さを持ち合わせてストイックに突き進んだ人は、倫理的な作品を生み出してると思う。古谷実とか松本人志とかスチャダラパーとか金剛地武志とか。

*1:そういえば、『アラザル』という批評同人誌があるわけですが、そのタイトル案に『批モテ』っていうのがあって、結局却下になったけどかなり僕は好きだった