web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

午後2時。傘をぶつけてすれ違い。

◇雨足の強い細道を妻と一列に歩く。後ろ姿を観ながら、足を滑らせないか気が気でない。

◇今日は横浜線で橋本まで出て、中華のランチバイキング。食後はアカチャンホンポをぶらぶらしながら、乳幼児に必要なものの試着などをする。帰りに31のアイスクリームを食べる予定だったのだが、昼間のバイキングが思いの外重くて断念。結局夕飯の時間になっても消化しきれず、ごく軽いもので済ませることになった。

◇昨夜は妻の誕生日の準備にブラウニーを焼こうとしたものの、失敗して焦がしてしまった。一年に一度しか焼かないために、未だ要領を得ない。コゲを落としたところで中身は尚固く、その時点でもはやブラウニーとは呼べない。途方に暮れて、失敗したブラウニーをまな板の上に放置したまま椅子で脱力していると、台所からせんべいをかじるような音が聞こえてくる。クッキーのようだと言いながら、妻がぽりぽり齧っていた。焦げていない部分が全体の8分の1ほどあるので、これをクッキーとして明日の朝に食べようと言う。
 今朝、妻がクッキーを齧る音で目を覚ました。

◇昨日は朝食を摂った後、水泳へ。50分1900メートル。実は先週の火曜日にも、会社を早く退けたために1500メートルほど泳ぐことができたのだが、やはり3週間分のツケは大変なようで、へとへとに疲れきってしまったのだった。最後の方はフォームが崩れてしまい、泳ぐこと自体がキツく感じられた。そんなこともあったので、週末は無理をしない範囲で1500メートル泳げればいいか、という気持ちで泳いでいたのだが、1000メートルを超えた辺りから呼吸とフォームがばっちり合い、大変気持ち良く泳ぐことができた。発泡酒が最高に旨かった。

◇気付けば夏休み。町田にある実家の近所の公園では、いつもこの時季に小さな祭りが催される。この公園は普段、僕が小学校からの腐れ縁と暇つぶしに缶ビールを飲む場所なのだが、祭りの日は人で賑わうので、近くの駐車場に移動して車の物陰、縁石に腰かけたりアスファルトの上で横になったりしていた。祭りの喧噪を聞きながら出店で買った生ビールや焼き鳥を味わって、やがて高揚感に感染した僕らは深夜に山下公園あたりまで出掛けるのであった。調子が出れば江ノ島辺りまで車を走らせることもあった。ガラの悪い車に怯えながら海を観て、普段の公園で交わしている会話をして、朝になる寸前に帰ってくる。車の持ち主は大抵そこで帰るが、最後に残った2、3名は缶コーヒーを買い、なんとなくまた公園を目指す。すっかり後片付けも終わり、残った櫓を眺めながらベンチに座る。口数少なくあくびをしたり、そのうち周りは明るくなって、朝の湿気が漂いだす。しばらくすると年配の男女が朝の体操に集まってきて、僕らはそこでやっとあきらめることを決意する。缶コーヒーはもうすっかり空になっていて、それを自販機横の回収箱に入れる音が終わりの音であった。一眠りしたら、どうせまたすぐに会うのである。

◇八王子に越してから、あの祭りには行っていない。今年も都合が合わない。



◇妻のお腹はあまり目立たないのだが、じっと観察しているとうねうねと表面が波打って、寝相を色々変えているのがよくわかる。妻は自分のお腹をぐっと手で押し、これ多分手だよ、と言って僕に触らせる。妻のお腹を強めに押すと、そこにはあっちやこっちへよく動く感触があり、確かに手のようであった。僕がしつこく手を触っていると、我が子は迷惑そうに身を捩って手を引っ込めてしまった。