web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

SIMI LAB内紛 QN vs. OMSB

◇similabの内紛ビーフ。ツイッター上で意味深なツイート(https://twitter.com/professorQN/status/204604923474755585)を残したかと思えば、数日経って突如としてサウンドクラウドでOMSBをdisり始めたQN(http://soundcloud.com/simi-lab/omsbeef-qn)。これに対して、現在OMSBがアンサーを返すかどうかに注目が集まっている。
 と、要するにビーフとしてはまだなんにも起きていない状況。ビーフ好きのリスナー達も、来るべき盛り上がりに向けて様子見、といった感じなのだけれども、そんなさなか、ちょっと変ったことが起きている。この一件について、菊地成孔が入ってきたという。

内容的にはどうということはない、DCPRGのアルバムの共演者として、QNとOMSB両者の才能を間近に見た氏の見解なわけだけれども、面白いのはこれがラジオというメディアに乗っかった「私信」というスタイルを取っているということ。つまり、ラッパーがdisったりアンサーを返したりするのと同様に、菊地成孔は、ラジオパーソナリティとして、ヒップホップ・マナーに則った形で(つまりミュージシャン的に)、これに言及している。
 菊地成孔は、ジャズメンではあるが、ラッパーではない。しかしジャズとヒップホップの近似を指摘する氏としては、これに対して、ヒップホップ・マナーに則った形で介入していくのが筋だと考えたのかもしれない。ラップのような言葉の使用がジャズにないならば、氏の別の側面、つまりラジオパーソナリティという立場から、ここに入っていく。菊地成孔の「アンサー」は、単にQNとOMSBへの「私信」なだけではなく、メディア人という立場を駆使した、ジャズとヒップホップの「ブリッジ」である。この点は、実は一番見逃せないポイントだと思う。

◇内紛前のsimilab。超仲良い。

いきなりQNとOMSBのツーショットから始まるので、ついニヤけてしまう。


http://d.hatena.ne.jp/andoh3/20120603より抜粋。



◇本ブログにのみ追記。
 数日後、OMSBがサウンドクラウドに、一時的にデモ音源をアップしていた。『joke』というタイトルを冠したそれは、氏にしては珍しくラップ付きで、「気にしないで俺は俺の道を行く」的な姿勢も聴き取れる。ある意味ではQNへのアンサーとも取れるわけだけれども、しかしQNのそれとOMSBのこれを聴き比べつつ、僕はこのビーフを、トラックメイクもラップもできる二人による、純然たるヒップホップ勝負のように感じていた。
 ラッパーのビーフにおいては、リリックのメッセージ性を中心に、どちらがどれだけヘッズのプロップスを集めるかに焦点が当たりがちだけれど、今回は両者がどのようなビートでどのようにラップしたか、というセンスの側面での勝負が際立っていたと思う。その意味で、これまで僕がリアルタイムに観察できたビーフのなかでは、個人的にぶっちぎりのベストバウト。今後、ラップもトラックメイクもできる人間が増えていくことが予想される以上、ビーフがこのような「ヒップホップ勝負」になっていくことは充分期待できる筈。ますます嬉しい世の中になっていく。

◇追記の追記。(6月12日)
 僕自身うかつだったのだけれども、OMSBの『joke』がアップされたとき、ツイッター上ではこのような発言(https://twitter.com/WAH_NAH_MICHEAL/status/210190541370048512)があったらしい。付け加えておく。
 ただ、『joke』がこのビーフ以前に制作された楽曲だったとしても、僕自身の見解としては、QNからのdisがなければアップがなかったという意味において、そしてOMSB自身が言うように、それがそのときの氏の気分を反映しているという意味で、僕はこれを一種のアンサー=回答として受け取っておこうと思う。