web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

午後9時。電車談義。

◇昼間、書店で立ち読みした京王線ムックが面白かったらしい。なかなか寝ない。

◇連休中、遠出続きではしゃぎ回った我が家だけれど、今週は妻が風邪気味だったり、私が右首肩の筋を痛めてたりで、あまり元気がない。唯一、我が家の息子だけが元気で、家のなかのほんの数メートルの移動すら小走りしている。彼と我々の折衷案として、近所の商業施設をぶらぶらする週末となった。
 土曜日は私と息子だけでペットショップや電器屋さん、書店等を回ってから、買い物をした。息子との会話の応酬もますます活発で、最近は自転車の移動時間もにぎやかだ。ちょっと前まで、後ろのシートから声をかけてくるのは、電車やバスを見かけたときぐらいのもんだったが、この日などは、公園の砂場で赤い輪ゴムを見つけたから母にプレゼントした、どこの公園の話かわかるか?、などと長台詞で問いかけてきたりする。自宅で体を休めている妻に、帰宅後に報告することがたくさんあって覚えきれない。
 その翌日。妻の元気が出てきたので、今度は家族三人で出掛ける。昨日書店で読んだのは電車の絵本だったけれど、本日は京王線を特集している雑誌や書籍を、家族全員で立ち読みした。普通に鉄道ファン向けのものだと思うが、身近な車両が写真で紹介されてる分、テンションもあがりっぱなし。帰宅してからも、京王線の総合検測車DAXはモーターカーに牽引されて走る、ということを何度も復習していた。復習の合間、昔走っていた緑色の車両が京王レールランドにあるので、7000系動物園線に乗ってまた行こう、とさりげなく誘われた。

◇右首肩の激痛にたまりかね、夜にバンテリンを塗ってみると、驚くほど痛みが軽減した。もっと早く塗れば良かった。世の中には色々なものがある。

◇夕食は義父母とともに回転寿司。のち、妻の実家でソフトクリームを食べながらサザエさんを観る。普段あまりアニメに反応を示さない息子が、声をあげて笑っている。ただ単に眠いときにもよくこんな風にもなるのだが、しかしサザエさんには生活の描写が多く、そういったことも影響しているのではないかと思う。考えてみれば、息子がサザエさんを見たのは初めて。洗濯やら買い物やら立ち話やら、といったアクションにいちいちツボらしいが、それはそこにリアルを観ているのかもしれない。なかでも伊佐坂先生は、造形からしてリアルなのか、出てくるだけで大爆笑である。

◇かつて『松本紳助』内の企画で、島田紳助にラップをさせようとしたことがあった。FIRSTKLASのプロダクションで、松本人志がリリックを書き、あとは紳助がレコーディングするだけ、という状態になっていたのだが、一連の流れをサプライズで知らされた紳助が、これを即座に拒否。結局頓挫している。「音痴だから」「歌は勘弁してくれ」という理由からであった。
 あまり気負った番組ではないし、これ自体は別になんてことない話ではあるのだが、なぜかこのエピソードが気になっている。
 紳助自身の経歴を見てみると、案の定幅広く、なかにはSHINSUKE-BANDをはじめとするボーカル活動だってある。自身を音痴と言う紳助だが、例えば漫才における音感やリズムにはかなり意識的だったりするし、いわゆるうまい歌を唄うことには長けていないかもしれないが、そうした非「音楽」的音楽センスを駆使して、自身のパーソナリティをある種のフォーマットに落とし込むことは不得手でないと思う。いずれにせよ、この企画を「歌」だから勘弁してくれというのは、ちょっとうまくない理由に聴こえる。
 同時にまた、島田紳助がボーカルでリリースした楽曲が、主にロックというフォーマットに乗っかっているのも気になる。ダウンタウンゲイシャガールズで類い稀なる音楽センスを発揮したのとも対照的。

 島田紳助は、なぜラップしなかったのか。これを突き詰めていけば、ラッパーと芸人の類似と相違が明確になるかも。