web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

午前10時。遠慮がちな蝉の声。

◇昨日一昨日と暑くなり、これで蝉の声でも聞こえれば夏なんだけど、と思っていた矢先、本日はずいぶん涼しい。近所の100均に行くと、出鼻をくじかれた蝉が、控えめに啼いていた。

◇先日扇風機が壊れてしまったので、これを機に買い換える。機種選びのポイントは、チャイルドロックの有無が最優先になる。

◇最近の息子は天邪鬼である。聞かれたことに対する回答は、とりあえず「〜しません」「〜じゃないよ」といった否定的な用法で返すのだが、それにしてもそのときの息子はやたらと嬉しそうだったりする。ごく初歩的なレトリックの快楽みたいなものなのかもしれないが、今の息子が体を動かして遊びたくて仕方がない時期にあることも合わせて考えると、唇の運動と叙述の運動がほぼ同じレベルで捉えられているようにも見えてくる。頭で考えたことを言葉に変換しているのではなくて、言葉になるその瞬間の唇の動きこそ、思考の運動なんじゃないか。
 何か不満があり、当たりたい気分のときの息子は、否定を強調したいあまり二重否定になったりする。機嫌の悪いときほど前向きなのである。

◇久々にのど自慢をちらっと観る。この番組は結婚前によく、公民館前の休憩スペースで眺めていた。妻とふたり、評価のシビアな鐘の音が、出場者の気持ちのこもった歌に切り込んでくる瞬間を心待ちにしたものだが、今日は息子とふたり、そんな時間を過ごしている。鐘の音に爆笑したり、控えの出場者の手拍子に合わせて踊ったりする息子を眺めては、普遍性のある番組の強さを感じていた。

◇stillichimiyaのこの感覚は、やっぱりスチャダラパーを思いださせる。

ヒップホップが参照する領域としては、映画が一番多いと思うけれど、スチャダラパーがさらにそこにプラスしていったのは、演劇やゲームや文学、そして日本芸能史だったりするわけだが、考えたら、こうやって隣接領域に積極的にリンクを貼っていく作業は、スチャ以来、stillichimiyaまで止まっていたような気がしないでもない。