web版:ラッパー宣言(仮)

ビートでバウンス 唇がダンス

昨夜22時。いつまでたっても寝ない2歳児。

◇息子にもこういう時期があったなあと思うが、娘はいまもたっぷり昼寝をするので、兄よりもこの時期が長い気がする。
 しまじろうのお友達、とりっぴとみみりんとにゃっきのぬいぐるみを使って、いつまでも寸劇を続けているのだが、話の脈絡に関係なく、みみりんとにゃっきが死んでしまったという設定になって、寝たふりをしていた両親は思わずどきりとして目を開く。私はあわてて話に入っていき、医師の診断の結果、みみりんとにゃっきは寝ているだけだということにした。
 診察後にシールを配るかかりつけの小児科医をまねて、ご褒美にみみりんとにゃっきにラムネを配った。彼女らは起き上がってラムネを食べた。

◇子どもたちの興味から死を遠ざけたいのは、おそらく私の方に準備ができていないからだろう。子どもの方はおそらく、ニュートラルに死を話題にできる。しかしそのニュートラルなところが、私を怖がらせるのかもしれない。

◇孤独感や疎外感に対して、どのように対処すべきか。いい歳をして自分は無条件に世の中に受け入れられているという感覚に支配されている人には絶対なりたくないが、孤独感や疎外感に支配されながら生きていくのは厳しい。もちろん人は本来的に孤独であるが、それを覆うヴェールがあまりにも薄過ぎるのは辛すぎる。
 古谷実の一連の作品は、その孤独感や疎外感との距離の取り方を描き続け、作品を重ねるごとに結論や決意がより豊かで複雑なものへと深化していく。その意味ではやはり連作であるが、とはいえ、微妙にやはり『シガテラ』までの作品とそれ以後ではアプローチが異なる。
 『グリーンヒル』を除き、『シガテラ』までの作品は、孤独感や疎外感を童貞のキャラクターたちに纏わせることによって、恋愛やセックスという行為が孕む可能性を示して見せた。しかし『グリーンヒル』と、『わにとかげぎす』以降の作品においては、恋愛やセックスの可能性をある意味で無効化し、それ以外の方法で社会とどう繋がるかを思考している。

◇自分が社会の外に押し出される感覚を、必死になって忘れようとしているのが今の状況だろう。
 それは裏返せば、すぐに外側に弾き飛ばされる危機感を強く覚えていることでもあり、ある意味では自分の倫理性を問う絶好の機会でもある。しかしなぜか、その危機感を忘れるべく、殊更に自分は社会の内側にいる人間であると言い募る。そんなのばっかり。

◇たとえば家族というのは本来、別種の社会であるはずなのだが、社会や世の中はひとつしかないと思い込みたい人は、家族もまた、社会と同様の「ふつう一般」のものでなければならないと言う。言い換えれば、社会が複数並行して存在するということに耐えられない人だ。
 そして、社会がひとつであるという圧力を受け、日々息苦しさを覚えながらも、しかし自分自身もその空気に加担してしまっている「女子」の苦悩を描いているのが東村アキコ東京タラレバ娘』である。

◇童貞ではなく女子というキャラクターに、社会からの疎外感というか、疎外されたらどうしようという不安を纏わせるこの作品は、仕事、友達同士の連帯、恋愛、セックス、そして結婚に至るまで、どのように疎外感を忘れられるかに必死だ。
 この作品における主人公たちは、かつてはイケてた女性たち。言ってしまえば、社会は単純にひとつだと思っており、その中心に位置していると思っていた人々だ。そんな彼女らが段々と、社会の外にはじき出される危機感を覚え、気付けばルサンチマンの権化となっていることを自覚する。だからこの主人公の女子たちは、ほとんどのシーンにおいて極めて差別的にふるまっていて、自分は彼らとは違うと主張したくてしょうがない。しかしその一方で、そんな女子的醜悪さを誰よりも自覚してもいる。だから苦しいのだ。
 彼女らは最終的に、今まで単一だと思われていた社会のなかに、自分たちだけの社会を用意することによって、世の中全般と前向きに関係を切り結ぼうとする。童貞と違って、もともと彼女らには、単純に恋愛やセックスをするだけで何かが変わるという幻想がない。しかし「幸せ」というのはイコール結婚のことであるという、極めて偏狭な世界に追いやられて生きている。年頃の女性が複数人、気楽にだらだらと飲んで過ごすことすら許されないこの社会に、いつ押しつぶされてもおかしくない状況に置かれている。

◇今の世の中の状況が、なんとなく童貞から女子っぽい感じに移行しているように見えるのは、結局、不景気だからかもしれない。不景気故の不寛容さが、あらゆる人を社会の外へと押し出そうとする。これまで漠然と、自分は社会の真ん中にいる、社会の外にいる人なんて知らないと言わんばかりだった人たちが、いつしか土俵際ギリギリに追いやられていることを自覚している。
 童貞は、元々社会の外側にいる。童貞の場合、社会にどうやって入っていくかが問題だ。しかし女子の場合、社会からどうやって出ていくかが問題になる。

◇最近、パスワードを失念したまま放置していたAppleIDをようやく復活させることができ、APPLE MUSICを使ってみようと思うのだけども、なんだかうまくいかない。そうこうしているうちにYoutube Musicなるサービスも出てきて、結局何がいいのかわからない。

 動画コンテンツも、一応アマゾンプライムをよく使っているけれど、Netflixはやっぱりかなり気になるし。