『How Many Times』は、ボブ・マーリーがスカを演奏していたstudio1時代には既にあった曲だが、後年、ドゥーワップ調のレゲエとして歌い直されてもいる。おそらくそちらの方が有名だろう。失恋の痛みを甘く軽やかに歌い上げていて、レゲエバージョンでは甘みが増している。ただ、私が初めてこの曲を聴いたのはこのスカのバージョンで、繰り返されるサックスのフレーズに顕著だが、全体的な軽やかさがとても好きだった。
失恋の曲だから結婚式にそぐわないのは当然だが、しかし私達のうち二人はこの曲の歌詞を全く理解していなかった。だからきっと、この曲をかけない理由は、リリックだけではないのだと思っている。
Lil KohhがイベントのフライヤーやポスターなどでKohhの姿を発見するたびに、「お兄ちゃんだ!」と嬉しそうにはしゃぐ様子が大変愛らしく、ファン的には大変和む作品なのだけれども、見所は318氏がはじめてラップをする小学生たちを相手に、ディレクションをしているところ。驚くほどの上手さに舌を巻く。
街のこどもたちの面倒を見るちょっと悪そうだけどやさしい兄貴、318氏の姿を見ていると、ベッドタウンとは違う下町の地力みたいなものを感じる。と同時に、スパイク・リー『クロッカーズ』に出て来る床屋の親父にも似た雰囲気を感じとって、やっぱり一筋縄ではいかなそう。
◇クリスマス前のことになるが、ミラノ座のラストショウプログラムにて『E.T.』を観賞。3歳の息子の映画館デビュー戦でもあった。二度目に自転車が飛ぶシーンに涙を堪えていたら、膝の上の息子が突然振り返り、興奮気味に「自転車飛んだの、しごいー(すごいー)」とたどたどしく話しかけてきて、たまらず号泣。そのまま虹のシーンまで止めどなく。
“I'll be right here.”の台詞から虹が描かれるまでの音楽が、とてつもなくすばらしくて、毎回驚いている気がする。シェルターが閉まりかけるときに、音楽が一旦静かになる演出は、おそらく一番最初に映画のなかの「音楽」を意識した瞬間でもあったと思う。言ってみれば、あの一瞬で、エリオットとE.T.の共振と断絶が同時に描かれてしまう。それは物語(映像)の流れとは少し違うタイミングで描かれる別れであって、つまり音楽はあくまで音楽として、映像の外側からこの物語に介入しているようにも見える。
その日帰宅して、興奮さめやらぬまま『E.T.』の話をしていると、「ところでETって、かくし芸大会で研ナオコがモノマネしてなかったっけ?」と妻が言う。