童貞の残り香
◇バイト中いつも見かける人。23時から終電くらいまで、改札を出てまっすぐベンチに向かい、小脇に抱えた雑誌を全て読み干してから帰る。40代半ばくらいの男性なんだけど、僕は勝手に、ウチに帰ると夫であり父であり、仕事場では一会社員でありって感じで、この「駅で雑誌を熟読」って行為が、そういった役回りから解放されるつかの間の時間なのかなって思ってしまったり。
◇以前彼女と近所を散歩してるとき、空き店舗に「餃子の王将、新装開店」の貼り紙を見たことがあった。餃子の王将大好きな僕は、おいしい餃子の食べ方をコーフン気味に彼女にレクチャーしていたのだけれど、じゃあ今度食べながら教えてねと言われた瞬間、急になぜか「しまった!」となったのを覚えている。
ひとりで餃子の王将に行って、ビールと餃子セットが来るまで好きな漫画に没頭する。それはホントまさに至福のとき。自分の中でお祝い事などあったときは、必ずそういうことをしていた。ケータイの電源を切ることすらあったり。その時間だけは、誰にもジャマされない、満ち足りた時間として死守していたのだと思う。
◇誰かと一緒にいるっていうのは、餃子の王将を失うことだったりする。そして砕かれ、破片となってバラバラに飛び散った餃子の王将の中に、「駅で雑誌を熟読」っていうのがあるんだと思う。
◇髪を切るときの注文の仕方がいまだにわからない。「てきとーでいいです」っていうと困った顔されるし、「2センチくらい切ってください」っていうとサイドはどうするとかって聞いてくる。サイドってどこかわからないけど適当に「耳出してください」とかっていうと、そうするとかなり短くなっちゃいますけれどって言うので、また「てきとーで」って言いそうになる。結局「それでいいです」を連呼してなんとか切ってもらった。早く就活終われよ!!家でボーズにするのが一番手っ取り早い。そうでなければ、どっかお任せで切ってくれるとこないかな・・・。